養老孟司、茂木健一郎 著
「スルメを見てイカがわかるか!」(仮題)
2003年12月10日、角川書店より発売
出版の経緯
本書は、2002年1月12日に朝日カルチャーセンター(新宿)で行われた茂木健一郎と養老孟司氏の対談を踏まえて、企画が立ち上がったものです。養老孟司さんの鎌倉の御自宅での対談などを踏まえ、企画ができてから約1年半後に出版の運びとなりました。
茂木と養老孟司さんの最初の接点は、茂木が1997年に日経サイエンス社から出版した「脳とクオリア」の書評を養老孟司さんが読売新聞に書いてくださったことでした。その後、日経サイエンスの対談で御会いしたり、養老さんが主催されている「養老シンポジウム」に参加させていただいたり、茂木が複雑系の研究者たちと開催した京都大学基礎物理学研究所での研究会に養老さんがいらしたり、さまざまな機会に御指導いただいております。(茂木健一郎 記)
目次
第1章 人間にとって言葉とはなにか 養老孟司
心というもの/言語と脳進化/言葉は止まっている/スルメからイカがわかるか?/個性の成り立ち/インプットとアウトプット/言葉には具体性がない
第2章 意識のはたらき 養老孟司、茂木健一郎
I 言葉と同一性
言葉と意識/「リンゴ」が「リンゴ」であること/同一性と意識/外側の世界と内側の世界/発生における制約/「いない」ことは証明できるか/主観と客観
II コミュニケーションと強制了解性
言葉における個人差と強制了解/感情が生み出すもの/脳がラクになる/ノーマルな脳/言葉がつたえるもの
III 言葉の流通性
言葉の流通性/切り捨てられてしまうもの/英語で書くということ/ネイティヴの壁/コミュニケーションが人間を規定する/体が規定する個性/世代間のコミュニケーション/世代間で変質したもの/生命の倫理
第3章 原理主義を超えて 養老孟司、茂木健一郎
ダーウィニズムと原理主義/原理主義に反対する立場も原理主義になる/都市と脳化社会/手入れと、都市のイデオロギー/経済成長とはなにか?/自然の循環、経済システムの循環/流通性の罠から逃れること
第4章 手入れの思想 養老孟司、茂木健一郎
人工物・自然物/自然について考えるヒント/神は細部に宿る/世界の部分から、全体を知ること/世界の単調化に対抗すること/アメリカ文明と暴力/アメリカの傷つきやすさと強迫観念/日本とアメリカの共通点/「手入れ」によって保たれる自然/手入れの思想
第5章 心をたがやす方法 茂木健一郎
脳をたがやす方法/常に変化し続ける脳/ヘッブの法則/つなぎ変わり続けるシナプス/エピソード記憶と意味記憶/言葉の意味/時代とともに変わる言葉の意味/落語家、小説家の言葉の修業/自分の言葉を磨くこと/言葉を磨く方法/無意識を手入れすること
おわりに 「覚悟の人」 茂木健一郎