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=== Qualia Mystery Remix==================================

         クオリア・ミステリー・Remix

          (1999/04/4)

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クオリア・ミステリーは、科学的アプローチを基礎に、様々な側面

から心と脳の関係について考える未来感覚マガジンです。

このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を

利用して発行しています。( http://www.mag2.com/ )

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Contents

・発行者から

・「質観」(Qualitivity)Remixed by まひと

 

●発行者から

 

 Qualia Mysteryでは、適宜、ゲストの方に心脳問題についての

御考えを述べていただいています。

 今後は、Qualia Mystery Remixというコンセプトに基づき、

単なるguest issueにとどまらないsynergyを目指します。

 今回は、「哲学界の宇多田ヒカル」(ヲ目指シテイルカモ)

のまひとさんの登場です。

 

<まひと(沖野真人)> 

1979年生まれ。名古屋市立名東高校普通科中退。

現在、自由人。

電子メイル  mahito@jupiter.interq.or.jp

 

●「質観」(Qualitivity)

 

 私は「愛」とか「信じる」を無批判に受け入れる者がとても嫌い

である。それ自体は良いのだ。しかしそれに伴う暴力をなくして

欲しいと切に願うからである。例えば「愛」の永遠を説く者がいる

としよう。(仮にAとする)

 

A:「愛は永遠だ」

私:「人類はいずれ滅びる」

A:「愛の事実は残る」

私:「それは何か意味があるのか」

A:「愛に意味はない」

私:「宇宙がなくなったら?」

A:「それでも信じることが愛だ」

 

 Aは議論の土俵には上らない。相手が自分の土俵に上って

(=愛の永遠を信じて)初めて対話を可能とする。また、もし永遠

ではないことを認めたとしても「刹那だからこそ美しい」と本質を

隠してしまうであろうことは想像に難くない。

 

 この種の暴力(不条理さ)はソクラテスのいう真実美にもいえる。

 私がいくら「永遠は私達が時間を感じるときその感覚の中にだ

け生まれる。だから永遠の美など幻想だ」と語ろうと、真実美を

信じるもの(探求するもの)は「それさえ取り除いた先に残る物が

真実美(の概念)だ」といってはばからないであろう。また、「無」を

説く者は「無いことさえ無い」と言い、そこから先へ進もうとはしな

いであろう。坐禅によって生まれるもの(変わるもの)は彼らの意

識においてのみであって彼らを取り巻く世界が変わるわけではな

い。(この場合彼らの「私の世界」自体は変わるかもしれないが)

 

 哲学は決してこのような形態になってはならない。

 「外界は私の認識の中にしかない」と言う言葉は真理に到達し

た者の言であろうか?いや、そうではない。彼らは主観こそ真実

という答えに縛られてしまい、客観をみることができなくなってい

るに過ぎない。彼らは自分で自分の系を閉じてしまっているのだ。

 「私にとっての真理」でしかないのならそれを他者に伝えること

はできるのであろうか。いや、できまい。なぜなら真理を知ったと

される「私」は彼にとっての「私」であって、私にとっての「私」では

ないからだ。それゆえ「外界は私の認識でしかない」という論法

は他者に語るのではなく自分に語っているという落ちになるので

ある。(それでもこれを語る論者は言い続けるしかないのである。

もし言えないのならば最初から信じてはいなかったからだ!)

 

 科学もまた然り、である。よく「科学は客観性が重要」といわれる

が、事象を観察するという主観的行為をそのまま客観視はできな

い。今の科学は「自分が見ている」ということを忘れ、揺らいだ客

観の上に立っているといわなければならない。言い換えれば客観

視すること自体主観的であるということを忘れてはならないという

ことだ。ただ、これに変わる有効な概念が現代においてはないこと

も真である。

 

 私達は今、パラダイムの移行を求められているといえる。客観性

と主観性の融合、「質観」(Qualitivity)とでも言うべきものが必要な

のだ。それには「私が感じている」と「外界の存在」を結びつける定

式がなくてはならない。そしてそれを導く鍵こそ「クオリア」ではない

かと私は考えている。

 

「鍵は見つかった・・・さあ・・・扉を開けようではないか・・・・・」

 

 

 

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○電子MG Qualia Mystery Remix 1999/04/04

発行者:茂木健一郎 (脳科学者)

kenmogi@qualia-manifesto.com

http://www.qualia-manifesto.com/qualia-mystery.html

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