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心脳問題ml、最も印象に残った投稿賞

qualia ml Most Impressive Submission Award

第7回

[qualia:5001] -[qualia:6000]

Mon, 8 Oct 2001 15:55:55 +0900-Mon, 6 Oct 2003 18:18:07 +090

[qualia:6112] クオリア3の感想と不満 by 青山拓央

 

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To: <qualia@freeml.com>

Subject: [qualia:6112] クオリア3の感想と不満

Date: Sat, 3 Nov 2001 23:46:04 +0900

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クオリア3に参加した、千葉大の青山拓央です。

前の方の席で、サンドイッチを食べていた者です。

 

今回の研究会は、<私>(in the sense of 永井均)

がテーマとのことで期待して出かけたのですが、

今ひとつ手ごたえを感じませんでした。

 

第一に、永井均さんの<私>に関する議論ですが、

結局今日の議論では、この問題について一秒も

論じられることはありませんでした。

 

僕の期待では、賛否両論にかかわらず、

多くの方が永井さんの議論を咀嚼した上で、

「その先の」議論をするために集まるのだと

考えていたのですが、<私>=霊魂という

致命的な誤解から議論がスタートし、

口をはさむ気力を失いました。

一応僕は永井さんの弟子なのですが、

師匠の議論を一から解説するなどという

やぼで面倒なことはしたくなかったので。

 

永井さんの議論に関しては、興味のある方が

各自著作に当たるとして、以下では今日の議論に対する

僕なりの感想を述べたいと思います。

 

まず、タケサカさんのレジュメ右上の思考実験ですが、

あの思考実験が多くの前提を利用していることは

明らかです。しかしそれを「論点先取」の一言で

切り捨てるのはもったいない。あの思考実験はむしろ、

「私」(<私>ではなく)の連続性に関するわれわれの

暗黙の前提を捕まえるための「捨石」だと考えるべきです。

あの思考実験に「乗れる」か「乗れない」かよりも、

なぜ自分が「乗れる」(もしくは「乗れない」)のかを

掘り下げることのほうが重要です。

ちなみに、どなたかが仰っていた「物理的(時空的)連続性」

の前提に関しては、永井さん自身が新刊のなかで

論じていたはずです。

 

ところであの議論に関して茂木さんが、

経験科学的なアプローチの欠如を嘆いたことに

僕は反対ではありません。ただしそれはあの議論が、

<私>の独在性に関するものではないからです。

茂木さんの著作は一貫して、自分と他者との境界を

踏み越えた、任意の一人物としての「私」のクオリアや

志向性を相手にしているように思われます。

それは科学者としては、妥当な選択だろうと思われます。

しかしその場合にも、「この私のクオリア」と

「あの私のクオリア」との間の深淵は、

数学的なモデル作りを脅かすこととなりますが。

 

次に池上さんの発表とその後の質疑に関してですが、

失礼を承知でお尋ねします。あの議論には本当に、

主観的な時間経験や、言語の志向性、そして心身問題に

光をさすような具体的な中身があったのでしょうか? 

たとえば直交する時系列の類比を使った、カオスとフッサールの

対応付けですが、ゆっくり考えてみれば見るほど、

そこに表面的な類似を越えた具体的な関連が

示されているようには思えません。フッサール時間論における

「縦」「横」の志向性が、直接何らかの経験科学的データに

対応付けられるとは思えないのです。

もし池上さんが具体的な関連を捕まえておられるなら、

ぜひML上で教えてください。謝罪とともに勉強します。

(僕は時間論が専門なので、非常に興味があるのです。)

 

最後に研究会全体への感想ですが、やはり一番残念なのは、

最後のディスカッションの時間が取れなかったことです。

もう一つ、残念というか、不思議だったのは、

「クオリアML」の集まりでありながら、クオリアの主観性を

正面から論じる議論がほとんど見られなかったことです。

すでに手にしている枠組み(主に物理学や数学に依拠する)

に沿う形で、問題の方を変形させてしまっている印象が

あったのですが、いかがでしょうか?

 

たくお

 

 

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